鈴木其一「夏秋渓流図屏風」
檜の森を流れる渓流。
右隻には白百合が、左隻には色づいた桜葉が描かれています。
樹木も花も岩肌も写実的に描かれている……と思いきや、
右隻の笹の葉は極端に簡略化されていますし、
百合の花も妙に大きいんですよね。
よくよく見れば群青の流水もなまめかしく、
現実と非現実が混ざり合い、均衡を保っています。
鈴木其一「夏秋渓流図屏風」、
仙境かくやと思わせる一双です。
Mountain Streams in Summer and Autumn(19th century)
Suzuki Kiitsu
鈴木其一は江戸琳派の立役者・酒井抱一の弟子。
琳派の画風を継承しながらも、
やわらかな雅趣を感じさせる抱一に対して
其一の作品は何かこう、研ぎすまされたものを感じさせます。
文系の目線と理系の目線みたいなものでしょうか。
たとえば右隻中央の檜には蝉が一匹とまっています。
身近な昆虫を作中にしのばせるのは師匠ゆずりではありますが、
これが抱一の作品なら蝉を見つけてやれ嬉しや、となるところが
其一の「夏秋渓流図屏風」ではそこに奇妙な違和感があり、
金地の無音が強調されるようでもあります。
この作品は根津美術館の
「国宝 燕子花図屏風 〈琳派〉の競演」で展示されていました。
毎年恒例、尾形光琳の「燕子花図屏風」の公開にあわせて
宗達や光悦、抱一、其一の作品を紹介するというもの。
琳派の面々による絢爛豪華な草花表現が見どころで、
加えて野々村仁清と尾形乾山のやきものも楽しめます。
会期は5月19日まで。
GWですが鑑賞に支障をきたすほどの混雑でもなく、
尾形光琳の「燕子花図屏風」もじっくり眺めることができました。
庭園のカキツバタも満開で、風薫る初夏の風情を堪能。
見に行くならお早めに!
庭園のカキツバタも見頃でした。黄菖蒲も咲いてましたよ♪
今日も明日もがんばろう。
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