足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

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「貴婦人と一角獣」

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鮮やかで、けれど気品漂う深紅の背景。
そこにはミルフルール(千花文様)と呼ばれる花々が散りばめられ、
兎や猿、犬といった愛らしい動物たちが遊びます。
円形の浮き島には美しい貴婦人がたたずみ、
両脇に侍るのは一角獣と獅子——。
夢の花園のような情景は、6つのタピスリーに封じられています。
その名も「貴婦人と一角獣」。
1500年ごろにつくられた中世美術の最高傑作は今、
六本木の国立新美術館で公開されています。
この連作はフランス国立クリュニー中世美術館の所蔵で、
フランス国外へ貸し出されたのは1974年のメトロポリタン美術館以来。
「フランスの至宝、奇跡の初来日」というコピーに偽りはありません。
それでは6つのタピスリーのうち、
まずは五感にちなんでいるとされる5点を見てみましょう。



■触覚
貴婦人と一角獣(触覚)

右手に旗を持つ貴婦人。左手で一角獣の角に触れており、
このことから「触覚」をあらわすとされています。
獰猛なはずの一角獣と獅子は、貴婦人に忠誠を誓うかのように
盾を身につけて両脇にかしこまっています。



■味覚
貴婦人と一角獣(味覚)

侍女が差し出した皿からお菓子をつまみ、オウムに与える貴婦人。
足もとの猿もお菓子を食べており、これらは「味覚」をあらわします。
一角獣と獅子は躍動的なポーズでそれぞれ旗と幟を支えています。



■嗅覚
貴婦人と一角獣(嗅覚)

花輪をつくる貴婦人と、彼女のために花かごを捧げ持つ侍女。
後ろの台のうえでは、猿が花の香りを嗅いでいます。
よって、このタピスリーが意味するのは「嗅覚」。
千花文様にふさわしい、匂い立つような一枚です。



■聴覚
貴婦人と一角獣(聴覚)

小型のパイプオルガンが中央に設置され、
貴婦人がしなやかな指先で奏でていることから「聴覚」。
この作品だけ一角獣と獅子が外側に体を向けていますが、
やはり貴婦人が気になるものか顔だけ中央に向いています。



■視覚
貴婦人と一角獣(視覚)

ここで貴婦人は腰を下ろし、鏡を手にします。
そこにうつるのは一角獣の姿。つまり「視覚」です。
貴婦人の表情はなんだか疲れて憂いに満ちているようにも見えますね。
獅子が顔をそむけているのも気になるところ。




そして、最後の一枚。
ここで情景が大きく変化します。




■我が唯一の望み
貴婦人と一角獣(我が唯一の望み)

貴婦人の後ろには青い天幕が設置され、
「我が唯一の望み(mon seul désir)」と記されています。
これはいったい何を意味するのか。
第6感であるという説や、あるいは「結婚」「愛」「知性」などという説も。
侍女が抱えた小箱から宝石を選ぶ(あるいは戻す)場面が描かれており、
足もとの台には仔犬が座っています。
この台は「嗅覚」と同じものですね。
「嗅覚」における猿が模倣の象徴とするなら、
ここでの仔犬は忠誠の象徴でしょうか。それとも愛玩? 富裕?


また、6枚をとおしてさまざまな衣装と髪型を見せてくれた貴婦人ですが、
豪奢な宝石を身に着けてはいるものの、実はいずれも指輪をしていません。
一角獣は処女に懐くとされていますし、
なんだかいろいろ意味深なんですよね。
やっぱり6枚目は「結婚」なんじゃないかなぁという気がしてきました。
小箱の宝石は男性からの贈りもの、天幕は新たな住まいの暗示だったりして。



こう考えていくと、順番も気になりますね。
国立新美術館では上述の順にホールをぐるりと囲むように展示されていましたが
クリュニー中世美術館では「我が唯一の望み」だけが離され、
向かい合うように左から「味覚」「聴覚」「視覚」「嗅覚」「触覚」という並び。
この連作は1841年にフランスのブーサック城で発見され、
小説家のジョルジュ・サンドが作中で賛美したことで有名になったそうですが
当時はどんな順番だったんでしょうね。
それによってもまた解釈が違ってきそうな気がするけれど。



国立新美術館の「貴婦人と一角獣展」では
会場中央に半円形のホールが位置し、そこにタピスリーが展示されていました。
天井が高く広々とした空間に高さ3m以上の作品が並んでおり、
あまりの壮観ゆえ会場に足を踏み入れた瞬間、
背中がすーっとなりました(空調のせい?)。
また、ホールを取り囲むように映像コーナーや
他の出品作の展示室が設けられており、
関連情報を頭にいれたらまたホールに戻れるつくりになっています。
出口の手前にも映像コーナーがあるので、
帰るつもりだったのにタピスリーを見に戻ってしまい
延々それを繰り返す、みたいな(笑)
出品作は計36点と少なめですが、何時間いても飽きることはないと思います。
そのくらい密度が高く、いろんな発見があるということです。
会期は7月15日まで、その後大阪の国立国際美術館に巡回します。
日本で見られるのはきっとこれが最初で最後。
ぜひ足を運んでみてください。




今日も明日もがんばろう。
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-2 Comments

ペチュニア says...""
毎日毎日、凄すぎる!!
格調高いし、気品もあるブログです!
2013.05.07 06:44 | URL | #- [edit]
スエスエ201 says..."Re: タイトルなし"
> ペチュニアさん

こんばんは。コメントありがとうございます。
お褒めにあずかり光栄です。
格調と気品は自信がありませんが…笑
2013.05.08 01:39 | URL | #- [edit]

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