山元春挙、竹内栖鳳、都路華香「世界三景 雪月花」
世田谷美術館の「暮らしと美術と高島屋展」。
当初はさほど気にも留めていなかったんですが、
この作品が出ていると知ってあわてて行ってきました。
「世界三景 雪月花」。
1910年の日英博覧会に出品された巨大なビロード友禅で、
山元春挙、竹内栖鳳、都路華香の
3名による下絵がもとになっています。
それぞれアメリカ、イタリア、日本の風景が描かれており、
今回の展覧会では、この下絵が出品されていたわけです。
それでは順に見て行きましょう。
■山元春挙「ロッキーの雪」
ロッキー山脈につもる雪。
手前の樹木の雰囲気からすると、
麓では吹雪いているのでしょうか。
山元春挙は最近とみに気になっている画家で、
滝や川、雪景色など水にまつわる表現が非常に優れているなぁと。
昨年、宮内庁三の丸尚蔵館で見た「義士隠栖」という作品も
吹雪の情景を描いた素晴らしい水墨画でした。
ちなみにこちらの作品は絹本墨画着彩なんで
墨のうえに色をのせているはずなんですが、
さて……素人目には分かりませんね。
そういった見えないところにまでこだわるのが絵師というものなのでしょう。
■竹内栖鳳「ベニスの月」
この作品は前にも紹介しましたね。
栖鳳の作品のなかでも一番好きなのです。
時は夕方でしょうか、
地平の際からのぼる月がベニスの建築群を
ぼんやりと浮かび上がらせます。
水面にはゴンドラが浮かび、大型船も停泊しています。
春挙の「ロッキーの月」とは違い、こちらは純粋な絹本墨画。
しかしながら「墨の五彩」という言葉もあるように
濃淡を活かした詩的な表情が見どころです。
西洋の景観に東洋の精神性をのせた傑作ですね。
■都路華香「吉野の桜」
日本が誇る、吉野の桜を描いています。
朝靄は燃えるような光をやどして
そこに淡い花びらが溶けて消えていく。
形を喪い、そこには香りが残るばかり……。
なんてことを思いながら鑑賞いたしました。
都路華香(つじかこう)は竹内栖鳳らとともに
京都画壇の隆盛を支えた画家だそうです。
春挙、栖鳳が遠景を描いているのに対し、華香だけが近景を、
しかも遠景で描かれることの多い吉野の桜を描いているのが興味深いですね。
世田谷美術館の「暮らしと美術と高島屋展」は6月23日まで。
高島屋にゆかりある洋画家・日本画家の作品が多く出品しており、
これがまた錚々たる顔ぶれでして。
百貨店がいかに日本の美術に貢献してきたか、
それを知ることができる意義深い展覧会だと思います。
ところで、竹内栖鳳の「ベニスの月」を見ていたら
「蘇州夜曲」が頭のなかで鳴り響いてしまいまして…。
同じ水の都とはいえ、栖鳳に叱られそうだ(笑)
今日も明日もがんばろう。
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