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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

狩野永徳「洛中洛外図」

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描かれた人物は、なんと2479人。
16世紀半ばにつくられたこの屏風には、
当時の京都市中と郊外のあらゆる名所、
そこに集まる人々が貴賎を問わず生き生きと描かれています。
時代を席巻した天才絵師のすべてが込められた、
絵画史上に燦然と輝く傑作。
国宝、狩野永徳「洛中洛外図」です。


   狩野永徳「洛中洛外図」右隻

狩野永徳「洛中洛外図」左隻
Views in and around the City of Kyoto(1564-5)
Kano Eitoku





……細かすぎてこのサイズの画像じゃ伝わらないですね(笑)
拡大図はこちらで見ることができます。
しかも冒頭で偉そうなことを書きましたが、
実はわたくし、まだ実物を見たことがございません。
最近読んだ山本兼一の小説「花鳥の夢」にて、
「洛中洛外図」のことがかなり詳細に描かれていてですね、
これは紹介せねばなるまい!と思ったわけでして。。
「花鳥の夢」は永徳を主人公に据えた歴史小説で、
約500頁のなかで「洛中洛外図」のために140頁近くが費やされています。
なぜ永徳がこのような屏風を描くに至ったのか、
そしてどのようにして作品を手がけていったのか。
絵師の挑戦と苦悩の日々が事細かに綴られ、
ここから永徳が天下一の絵師としてのし上がっていく様が描かれます。



花鳥の夢花鳥の夢
(2013/04/26)
山本 兼一

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このへんのストーリーは小説を読んでいただければ、ということで、
今回は永徳の「洛中洛外図」の特異性について。
この屏風は当時の定番ともいえる画題であり、
同名の作品は日本に100以上もあるといわれています。
建築物や人物だけでなく、当時の風俗や年中行事が描かれているのが特徴で、
右隻に春と夏を、左隻に秋と冬を描くのが約束事なんですが
永徳の「洛中洛外図」では、これがまったく守られていないのだそうです。
春夏秋冬があちこちに描かれ、ある意味混乱したつくりになっている、と。
この謎について、小説「花鳥の夢」では以下のように書かれています。


 紫野の大徳寺、今宮の社、衣笠の鹿苑寺金閣、船岡山、高雄の神護寺、千本閻魔堂……、ああ、鹿苑寺の金閣には、ぜひ雪をうっすらと積もらせたい……、北野の天満宮には、梅がなくてはならない……。嵯峨野、愛宕山、渡月橋、松尾社はどこに描こうか……。
 そこに、季節の風物や人を配置していく。
 門松、左義長、寺社の参詣人、法会、蹴鞠、鳥刺し、洛中を歩く大原女、川の漁師、輿をかついだ行列、武者の行列、門前で主を待つ従者たち、女たち、物売り……。町中の店にならべる品物はどうするか、あれも描きたい、これも描きたいと思いつつ、烏丸通りから西に配置すべき粉本を、あちらに置き、こちらに動かしながら、全体の構図を練り上げていった。



つまり永徳は、鹿苑寺の金閣なら雪景色といったように
それぞれの寺社建築に最も適した季節や
そこに描くべき人物・シチュエーションを考え、
一双の屏風に描き込んでいったわけです。
金の雲霞を巧みに用いて季節の連なりを調整し、
京の都の華やぎを、ことごとく描き尽くす。
戦乱の傷跡のこる“目にうつる都”ではなく、
花々が咲き乱れ、人々が歌い踊る理想の都を——。


この「洛中洛外図」は織田信長の手に渡り、
さらに上杉謙信に贈られたことから「上杉本」と呼ばれ、
現存する数少ない永徳の作品として今に伝わります。
そして……。
10月8日より東京国立博物館で
「京都 洛中洛外図と障壁画の美」という展覧会が予定されており、
洛中洛外図の優品が一堂に会するとホームページに書かれています。
詳細はまだのようですが、永徳の洛中洛外図が出ることを期待しながら。
この秋が待ち遠しいですね♪




今日も明日もがんばろう。
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