足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

谷文晁「秋夜名月図」(ファインバーグ・コレクション)

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文化14年の仲秋の良夜、隅田川に遊んだ時、
清か(さやか)な月の光が昼日中のようであり、
目にした景観はまさしくこのようであった。

                  (谷文晁)


谷文晁「秋夜名月図」
Grasses and Moon
Tani Buncho




仲秋の名月と天に伸びる葦を墨一色で描いた、
谷文晁「秋夜名月図」。
冒頭の文章のような内容が右上に描かれており、
よほど改心の作だったのでしょう、どどんと落款が……でかすぎる(笑)
だって満月よりも大きくて、ここだけ色がのってるわけですからね。
作品の横幅が約170cmですから、
落款だけで幅30cmくらいはありましょうか。
こんな大きな落款、はじめて見ました。


谷文晁は江戸時代後期の文人画家。
酒井抱一と同時代に活躍し、
狩野派、円山派、土佐派、琳派、さらに朝鮮画や西洋画も学び
諸派の様式を取り込んだ画風を確立しています。
文人画はちょっと自分には早いかな……と思ってたんですが、
谷文晁の「秋夜名月図」をはじめ
江戸東京博物館のファインバーグ・コレクション展に出ていた文人画は
思わず見入ってしまうものが多く、がぜん興味がわいてきました。
7月3日からはサントリー美術館で
谷文晁の生誕250年を記念した展覧会が予定されてますので、
こちらも要チェックです。



ところで、冒頭の文章に出てくる「良夜」という単語。
これ、「あたらよ」と読むのだとずっと思ってました。
中原中也の「初夏の夜」という詩にこの読み方で出てくるんですが、
正確には「可惜夜」と書いて「あたらよ」と読むみたいで。
「良夜(りょうや)」は月のきれいな夜、特に中秋の名月のこと。
「可惜夜(あたらよ)」は明けてしまうのが惜しい夜のこと。
またひとつ勉強になりました。




中原中也「初夏の夜」


また今年(こんねん)も夏が来て、
夜は、蒸気で出来た白熊が、
沼をわたってやってくる。
――色々のことがあったんです。
色々のことをして来たものです。
嬉しいことも、あったのですが、
回想されては、すべてがかなしい
鉄製の、軋音(あつおん)さながら
なべては夕暮迫るけはいに
幼年も、老年も、青年も壮年も、
共々に余りに可憐な声をばあげて、
薄暮の中で舞う蛾の下で
はかなくも可憐な顎をしているのです。
されば今夜六月の良夜(あたらよ)なりとはいえ、
遠いい物音が、心地よく風に送られて来るとはいえ、
なにがなし悲しい思いであるのは、
消えたばかしの鉄橋の響音(きょうおん)、
大河(おおかわ)の、その鉄橋の上方に、空はぼんやりと石盤色であるのです。







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