山口蓬春「梅雨晴」
梅雨の合間の晴天のした、
誇らかに咲く鞠のような紫陽花。
山口蓬春の「梅雨晴」は、
そんな瞬間を描いた美しい一枚です。
晴れたりとはいえ、いくぶん湿気の多い空気のなかで
太陽の光を受けてか葉っぱが金色に輝いているのが印象的ですね。
紫陽花の花は、寄り集まって羽を休める蝶のようにも見えます。
Sunny Moments in the Rainy Season(1966)
Yamaguchi Hoshun
山口蓬春は大正・昭和に活躍した日本画家。
洋画から出発し、やがて日本画に転向。
伝統的な日本画にマティスやブラックなどのフランス近代絵画の要素を取り入れ
モダンで知的な様式を確立します。
紫陽花は蓬春が好んで描いた花のひとつなんだとか。
今日は朝からカラッと晴れて
まさにこの「梅雨晴」のような気持ちのよい一日……のはずだったんですが、
金曜夜から朝まで飲んでまして。。
二日酔い気味でずっと自宅に引きこもっておりました。
あぁ、もったいないことをした。。
さて、ついでといっては何ですが、紫陽花にまつわる歌を。
グレープの「紫陽花の詩」という曲です。
蛍茶屋から 鳴滝までは
中川抜けてく川端柳
他人の心を胡麻化す様に
七つおたくさ あじさい花は
おらんださんの置き忘れ
思案橋から眼鏡橋
今日は寺町 廻ってゆこうか
それとも中通りを抜けてゆこうか
雨が降るから久し振り
賑橋からのぞいてみようか
南山手の弁天橋を
越えて帰るは新地を抜けて
出島の屋敷は雨ばかり
むらさき 夕凪 夢すだれ
むらさき 夕凪 夢すだれ
「七つおたくさ あじさい花は おらんださんの 置き忘れ」と歌詞にあるので
江戸時代に長崎出島に滞在したシーボルトと重ね合わせているのでしょうか。
「七つ」は紫陽花の別名「七変化」、
「おたくさ」も同じく紫陽花の別名で、
シーボルトが愛した女性「お滝」にちなんだ名前。
お滝さん→オタキサン→オタクサということで、
植物学者でもあったシーボルトは
「オタクサ」という名前で紫陽花を西洋に紹介したそうです。
お滝とのあいだに子どもが生まれながら、
シーボルトはその2年後に帰国することになります。
ところがこのとき、積み荷に禁制の日本地図があったため国外追放処分に。
二度とは会えぬ「置き忘れ」の恋人を思い、
紫陽花に「オタクサ」という名を付けたのでしょうか。
でも……。
紫陽花の花言葉は「移り気」なんですね。
それこそ、「他人の心を胡麻化す様に」。
シーボルトはその後ドイツ人女性と結婚し、
追放処分が解けて日本に戻ってきてからもあれこれと。
人の心は分からぬものです。
分からぬことが分かっているから、
愛し続けることは尊いのでしょうけれど。
ちなみにぼくの父が長崎生まれでして、
でもまだ一度も行ったことがないんです。
父の実家は今も長崎ですが、いろいろ事情があるみたいで。
一度行ってみたいんですけどね。
今日も明日もがんばろう。
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