川合玉堂「早乙女」
実に健康的で牧歌的。
のどかで明るい田植えの風景です。
川合玉堂「早乙女」。
山種美術館の川合玉堂展より。
Young Ladies Planting Rice(1945)
Kawai Gyokudo
上から見下ろした見事な鳥瞰構図。
簡略化されたあぜ道はなだらかなカーブを描き、
絵具のにじみを利用する琳派の技法・たらし込みが用いられています。
青々とした早苗を手に
姐さんかぶりの女性たちが作業に精を出しており、
紺の絣に手甲と脚絆、菅笠をかぶった女性もいます。
5人のうち、表情が見えるのは2人だけですが
どちらも穏やかに笑みをたたえていて
のんびり幸せな気持ちになってきますね。
この作品が発表されたのは、1945年。
その前年から玉堂は東京都下西多摩郡三田村御岳(現在の青梅)に疎開しており、
そこで見た風景を絵にしたようです。
戦時中とは思えないほど静かに澄んだ田園風景は、
玉堂が求めた平穏のあらわれでもあったのでしょうか。
ぼくの実家は埼玉なんですが、
家のすぐ近くには田んぼが広がっていて
よくあぜ道を散歩したり、蛙やザリガニなんかをつかまえて遊んだものです。
あのころはカブトエビという不思議な生き物が
普通に田んぼを泳いでいたものですが、今はどうなんだろう。
ドジョウにアメンボ、この時期の月のない晩には蛍も見れたっけ。
玉堂の「早乙女」を前に、当時のことを懐かしく思い出しました。
今日も明日もがんばろう。
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