ザオ・ウーキー「風景 2004」
ブリヂストン美術館で開催中の「色を見る、色を楽しむ。」。
色彩をテーマに館蔵のコレクションを紹介するというもので、
赤や青といった色ごとに作品が分類されているのかな、と思いきや
画家自ら、あるいは工房で絵の具が作られたレンブラントの時代から
チューブ入りの絵の具を屋外へ持ち歩けるようになった印象派の時代へと
まずは色の歴史をたどるかたちで作品が展示されていました。
そこからモノクロームを自在に操りやがて色彩に目覚めたオディロン・ルドン、
ピカソの変転、マティスの弾ける色づかいなど画家ごとの展示へ。
この3人はそれぞれ個別の部屋が与えられており、
特にマティスの部屋は、晩年の切り絵「ジャズ」の20点がすばらしかった!
タイトルの通り、セッションのように色彩が跳ねたり踊ったり絡み合ったり。
そういえば次の直木賞候補に
原田マハの「ジヴェルニーの食卓」がノミネートされてましたが、
この短編集のなかで、マティスが切り絵を制作するシーンが出てきます。
それから切り絵と言えば千葉市美術館の高村光太郎展。
千恵子の切り絵も展示されるみたいで、そのうち行かなくちゃなぁ、と。
さて、だらっと書いてしまいましたが…。
今回の本題は、「色を見る、色を楽しむ」の最後に用意されていた
中国出身の画家、ザオ・ウーキーについて。
今年4月9日に亡くなった画家への追悼の意をこめて、
ブリヂストン美術館のコレクションから9点の作品が展示されています。
Landscape 2004(2004)
Zao Wou-Ki
こちらはザオ・ウーキーの「風景2004」という作品。
ぼくはこの作品から、山の向こうに沈んでいく夕陽を連想しました。
霧につつまれた中国の霊山に日が落ちて、地平の際が真っ赤に染まる。
天と地が渾然と、黄金色に溶け合い、やがて闇がおりてくる。
抽象的な作品世界に、そんな光景が見えました。
ザオ・ウーキーの作品は、
光や水が揺れて混じり合うような
動的な筆致が特徴なのですが、
中国出身ということもあって
どこか東洋的な、寂びたものを感じさせます。
おなじみの「07.06.85」も
青の洞窟を思わせる色彩にまず目をひかれますが、
そこはかとなく、東洋の息づかいが聞こえてくるんですよね。
展覧会ではこのザオ・ウーキーの部屋とマティスの部屋を行ったり来たりして、
対照的な2人の色彩表現で楽しませていただきました。
会期は9月18日まで。
それでは最後に、アルベール・サマンの「夕暮れ その三」という詩を。
空は今青ざめし黄金色の湖に似て絶え入らんとし
遠く望めば広野ももの思ふ風情なり、
静けさと空しさの漲れる空に
夜のさびしき魂はひろごる。
彼方此方(あなたこなた)に燈火(ともしび)のほの見ゆる頃
繋がれたる二頭の牡牛は小径より帰る、
頭巾頂ける老翁は両手に頤(おとがひ)を支えつつ
茅屋の戸口に静けき夕暮れを思ふ。
鐘の音の遠く聞ゆる孤村はもの寂しく、
跳ね廻る白き小羊曵きて行く基督を描きし
古拙なる画面にも似て素朴なり。
星くづは暗き空に、降る雪に似て輝き初め
彼方小山の頂きに動かず立てる、
牧人の古風なる影は夢みるに似たり。
おまけのおまけ、シガー・ロス。
今日も明日もがんばろう。
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