グルスキー「バンコク VI」
3連休最終日、さすがにゴロゴロするわけにはいくまいと六本木方面へ。
いま話題の「アンドレアス・グルスキー展」を見に
国立新美術館まで行ってまいりました。
Bangkok VI(2011)
Andreas Gursky
こちらは「バンコク VI」。
バンコクの川面を写し取った連作のひとつで、
ゴミが浮かび澱んだ川の表情をとらえた示唆的な作品。
日経のアートレビューによると
このシリーズはモネの連作「睡蓮」にたとえられることもあるそうですが、
実物を見てなるほどと納得しました。
光のうつろい、浮かんでは消える日常の泡沫。
モネが追い求めた光とは対照的な負の美しさがそこにありました。
さて、グルスキーに関しては
今回の展覧会で名前を知ったくらいのレベルなんですが、
覚えたことをそのまま書き連ねますと……
ドイツの写真家アンドレアス・グルスキーは
デジタル技術を駆使した作風で注目を集め、
昨年のクリスティーズのオークションでは
「ライン川 II」という作品が写真作品としては最高額となる4億3千万円で落札。
この作品の縮小版も展覧会に出品されています。
グルスキー「ライン川 II」。対岸の建造物はデジタル加工で消し去り、抽象的な作品に。
彼の写真の特徴は、
隅から隅まで対象が均質にとらえられているという点にあります。
普通、写真を撮るとどこか一点にピントが合うため、
その周囲はぼやけるものなんですが
グルスキーの場合はどこを見てもピントが合っているという状態なんですね。
そのため、「バンコク」シリーズにしてもかなり上空から撮影しているはずなのに
川面に浮かんでいる雑誌や菓子パンの袋の文字まではっきり認識できるのです。
マクロとミクロが同時に表現されているといいますか。
これは代表作の「99セント」などにも共通する特徴で、
どこまでもどこまでも対象が鮮明に、存在感をもって映し出されています。
すべてが平等にとらえられているという点においては
神の視座を写真で表現したといえるかもしれません。
グルスキー「99セント」。原色と情報の洪水だ。
とはいえ、緻密なだけに情報量も多いため
個人的にはちょっと疲れるな……という印象。
10点くらい見ればもうおなかいっぱいです。
「バンコク」シリーズは緻密でありながらもゆったりした世界観で
これらが会場に分散して展示されてたので助かりましたが。。
おもしろい展覧会は? と聞かれたらまずグルスキー展を薦めるだろうけど、
自分はもういいかなー、というのが本音であります。
あ、でもカメラマンさんと一緒だったらまた行きたいかも。
どんなレンズ使ってるのかとか、
どのへんからデジタル処理なのかとか、
対象と写真家の位置関係とか、そういうのご教示いただきたい。
前に仕事でスカイツリーの撮影をしたときに
超広角レンズを見せてもらったことがあって、
そういう道具やテクニックのすごさもあるだろうから。
グルスキー「カミオカンデ」。ニュートリノの観測装置の内部。
ちなみにグルスキー展、
作品に近づきすぎるとピーピーと警報が鳴るという新たな試みが(笑)
音は小さいんですが、あちこちからピーピー聞こえてくるんで
これどうにかならんもんかなーと。
作品名が作品と離れすぎているのも気になったし、
展示の順番とリストの順番がまったく違うのもアレですね(これはよくあるけど)。
これからどんどん混み合っていくことを考えると
早めに改善してほしいものです。
さて、また話は変わりまして。
とてもいいニュースです。
来年6月、モネの「ラ・ジャポネーズ」が来日! なのです。
「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム」という展覧会で、
世田谷美術館にはじまって京都市美術館、名古屋ボストン美術館に巡回。
「ラ・ジャポネーズ」は当ブログの記念すべき第一回を飾った作品なので
これは絶対見に行かなければ! です。
来年は第一回印象派展からちょうど140年目ですし、
印象派イヤーになるといいなぁと期待しております。
今日も明日もがんばろう。
![]() | Bangkok (2012/11/15) Andreas Gursky 商品詳細を見る |
- 関連記事