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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

シャヴァンヌ「貧しき漁夫」

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そういえば。
来年1月より、Bunkamuraでシャヴァンヌ展が予定されているのでした。
印象派やアカデミズムとは一線を画し、
19世紀最大の壁画家と呼ばれた
ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ。
穏やかな色彩と詩情をたたえた作風は
同時代のフランスの画家、ドニやルドン、スーラなどに支持されました。
シャヴァンヌの作品というと、印象深いのはやはりこちらでしょうか。
オルセー美術館所蔵、「貧しき漁夫」という作品です。


シャヴァンヌ「貧しき漁夫」
The Poor Fisherman(1881)
Pierre Puvis de Chavannes




小舟にたたずみ、こうべを垂れて
亡き妻への祈りを捧げる漁夫。
岸辺では彼の2人の子どもたちが、
1人は熱心に花を摘み、1人はあどけなく寝息を立てています。
それぞれが妻を母を思いながら
静けさのなかに身を置いているのでしょう。
波一つない水面と、そこにうつる影は
漁夫の祈りの深さと、その哀しみをあらわしているのでしょうか。
あるいは最愛の人の死を受け入れたのはこの漁夫だけで、
子どもたちはいまだ追憶のなかであそんでいるのかもしれません。


この作品は、数年前に国立新美術館で開催された
「オルセー美術館展」ではじめて目にしました。
ぼくたち日本人、とくに関東在住のものにとっては
ある意味なじみの深い作品といえます。
なぜならこの作品の別バージョンが、
国立西洋美術館の常設で飾られているから。
タイトルも同じく「貧しき漁夫」。
小舟のうえで祈る漁夫の姿は同じですが
年上の子どもの姿はそこになく、
赤ん坊は岸辺ではなく船のなかで眠りについています。

シャヴァンヌ「貧しき漁夫」西洋美術館



もう一点、「貧しき漁夫」に対して連想する作品を。
東京国立近代美術館所蔵、小杉未醒の「水郷」という一枚です。
先日、盛況のうちに幕を閉じた「夏目漱石の美術世界展」にも出ていました。
作品を見るたびに「あぁ、シャヴァンヌだなぁ」と思っていたんですが
その類似性は実際に指摘されているのだそうです。
小杉未醒のそれは、祈りではなく労働なのですが
その2つの強い結びつきは、美術ファンなら言わずもがなでしょう。

小杉未醒「水郷」



そしてもうひとつ……
フェルメールの「手紙を読む青衣の女」も連想してしまうのです。
手紙の向こうに会えぬ相手を思うのは、
どこか祈りに似ているかもしれません。
この作品は東京ではなく京都で見ました。
このころが一番しあわせだったのかなぁ。

フェルメール「手紙を読む青衣の女」



他にもいろいろ出てきそうですが、きりがないのでこのへんで。
またとりとめもない感じになってしまいましたが……
シャヴァンヌの静かな抒情が、ぼくは好きなわけです。
その色彩がモーリス・ドニに通じる気がして。




今日も明日もがんばろう。
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