高村光太郎「手」
今日は千葉市美術館へ、
「生誕130年 彫刻家・高村光太郎展」を見てきました。
Hand(1918)
Takamura Kotaro
高村光太郎の彫刻といえば、
やはり「手」でしょう。
仏教の「施無畏の印相」をあらわしており、
大仏様などで見られる形をしています。
指の一本一本が異なる曲がり具合で
何かを訴えかけてくるような緊張感をはらんでいます。
ブロンズ彫刻のつけね、手首の部分は木彫と接合されており、
父・高村光雲ゆずりの木彫技術がここに顔をのぞかせていますね。
ちなみに会場では「獅子吼」という卒業制作も展示されており、
こちらは雄々しく力強いブロンズの人物彫像ですが、
衣服の表現がどこか木彫を思わせる作品でした。
高村光太郎「獅子吼」。着物の表現に注目です。
もともと光太郎は父のもとで木彫を学びましたが、
東京美術学校への入学後、彼はブロンズ彫刻に急速にシフトしていきます。
近代彫刻の父ロダンに傾倒し、海外留学などで技術を磨くなかで
たどり着いた表現が「手」だったのです。
会場ではロダンやブールデル、マイヨールなど
西洋の彫刻家の「手」も展示されており、
光太郎との違いを見比べるのも面白かったです。
「手」は1918年、ロダンが亡くなった翌年の作品。
この年を境に、光太郎はブロンズ彫刻の制作を中断することになります。
詩作など文芸活動で多忙になったからとされていますが、
妻・智恵子の父親がこの年に亡くなっており、
智恵子自身も体調を崩していたことなども影響しているのでしょうか。
このあと、光太郎はブロンズ彫刻ではなく
自身の原点である木彫に回帰することになります。
そして、愛する妻の心の病と死。
少し長くなってしまいそうなので、
木彫作品については次回ご紹介したいと思います。
千葉市美術館の「高村光太郎展」は8月18日まで。
ブロンズ彫刻、木彫、晩年の十和田公園の裸婦像関連作品、
そして智恵子の切絵という4つのブロックで構成されています。
すばらしい展覧会であるにもかかわらず、びっくりするくらいすいてました。
関東近郊にお住まいのかた、強くおすすめします。
今日も明日もがんばろう。
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