小林清親「御茶水蛍」
夜の神田川に浮かぶ無数の光。
昔はお茶の水にも蛍がいたんですねぇ。
屋形船のあかりもまた、詩情を誘います。
小林清親「御茶水蛍」。
身長2m近くの寡黙な男が描いたのは、
杉浦日向子の表現を借りるなら
「今にも泣き出しそうな東京の姿」でした。
Fireflies at Ochanomizu
Kobayashi Kiyochika
気がつけばもう8月。
蛍の季節はとうに過ぎてしまいました。
まだ蛍を見たことがないと言っていたから、
いつかこの果敢ない火群を見せてあげたいと
ずっと思っているけれど……。
月のない静かな晩に、星々は雲間でかすかに揺れ動き、
玉のような夜露は光をはらんで鈍く光るでしょう。
それは蛍がおとしていった欠片のように
ゆらゆらと揺れながら消えては生まれるのでしょう。
真っ白な釣鐘草がうつむき加減に咲いている。
瀬音はやさしく、夜風が蛙声を運んでくる。
光は熾火に姿をかえて、静かに燃え続ける。
そんな夜を夢見ています。
今日も明日もがんばろう。
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