谷文晁「武蔵野水月図」
品よく伸びた芒の穂、可憐に咲く桔梗や女郎花。
武蔵野をいろどる秋草の向こうには穏やかな流水が広がり、
その川面にはうっすらと月の影が落ちています。
谷文晁「武蔵野水月図」。
これもまた、画家の多才さを窺い知ることができる作品です。
Moon on the Creek of Musashino
Tani Buncho
琳派の雰囲気を漂わせたこの「武蔵野水月図」ですが、
たらし込みのような技法は用いられず、
あくまでも色彩と構図の妙で琳派風を装っています。
谷文晁は江戸琳派の大成者である酒井抱一と親しかったそうで、
サントリー美術館の「谷文晁展」では抱一との合作「老梅図」も。
文晁、抱一、そして書家の亀田鵬斎の3人をあわせて「下谷の三幅対」といい、
下谷(台東区)にそれぞれ居を構えていたことから終生親交を結んだのだとか。
一緒に旅行にいったり、百花園で遊んだりしてたそうで
なんともうらやましい交友関係…。
「武蔵野水月図」も、抱一の影響が少なからずあったのかもしれません。
江戸絵画は、こういう意外な交友関係や接点が見えてくると
俄然面白く感じられてきます。
有名な画家同士が驚くほど近所に住んでいたりして、
交流したり反目したりしながら技術を磨いていたんでしょうね。
今日も明日もがんばろう。
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