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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

デューラー「百合の習作」とノヴァーリス「青い花」

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デューラー「百合の習作」
Study of a Lily(1526)
Albrecht Durer





君は広大な世界の心情を深く洞察せんとする
 気高い願いをぼくに呼び覚ました。
 どんな嵐をついても安全に導かれる
 信頼が君の手からひしと伝えられた。

君は予感を与えて子供を育み、
 おとぎの園へといざなった。
 また心やさしい女性の原像となり、
 若者の胸をこよなくふるわせた。

ぼくをこの世の煩わしさに縛るものは何だろう、
 この心も生命も君のものではないか、
 君の愛が地上でこの身を守ってくれぬのか。

君のため気高い芸術に身を捧げよう。
 なぜなら、愛するひとよ、君はミューズの女神として、
 ぼくの秘かな詩の守護神たらんとするのだから。

    ———————————

はてしない変身のうちに歌の神秘な力は、
 この世でぼくらにあいさつをおくる。
 かなたで永遠の平和を国土にめぐみ、
 こちらでは青春としてぼくらを抱きとめる。

歌の力こそぼくらの目に光をそそぎ、
 あらゆる芸術を解する力を授けてくれる。
 だから心うれしきひとも疲れたものも、
 つつましやかにこよなき味をたのしむ。

そのふくよかな乳房を吸って生命を得、
 今かくあるのはそのおかげ、
 喜ばしく顔を上げられたのだ。

ぼくの至高の感覚がまだ眠っていたとき、
 歌の力は天使となって舞いおりて、
 目覚めたぼくを腕に抱き、かなたへと飛翔した。





ドイツ・ロマン派の詩人ノヴァーリスが遺した未完の小説「青い花」。
その冒頭をかざるのが、上に記した詩です。
4・4・3・3のソネットを2つ連ねた美しいしらべに浸りながら、
読者はまどろみの旅へといざなわれます。
青い花に焦がれた詩人のあゆみは
気高く澄んだ水の流れのように
ときに激しく、ときにゆるやかにうつろい……
作者の死によって幕を閉じるのです。
夢が永遠に続くことを物語るごとく、
余韻と謎を残しながら。


難解な小説ですが、冒頭の詩に強く惹かれ、
物語を織りなす美しい言葉の数々に陶酔しながら
読み終えたのは2ヶ月ほど前でした。
今この小説を思い出し、書いてみたくなったのは
やはりそういう季節だからでしょう。
ぼくが好きになった女性もミューズであり、花のような人でした。
青い空を愛した、白い花。
今またなつかしく、あのころのことを思い出しています。





今日も明日もがんばろう。
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