ハンマースホイ「ライアの風景」
19世紀末デンマークの画家、ヴィルヘルム・ハンマースホイ。
彼が多く描いたのは物憂い女性の背中なわけですが、
実はこんな作品ものこしています。
View of Lejre(1905)
Vilhelm Hammershøi
ハンマースホイ「ライアの風景」。
なだらかな丘の向こうに樹木がのぞき、
そのうえに爽やかな青空が広がっています。
雲はリズミカルに連なり、思わず口笛でも吹きたくなるような。
2008年に国立西洋美術館で開かれたハンマースホイ展の図録を見ると、
彼は建築や風景画も多く手がけているものの
それらは一様に暗く重く、息がつまりそうなほどの沈黙に包まれています。
そのなかで「ライアの風景」は例外的に、明るく柔らかい印象なんですね。
ハンマースホイは何を思ってこの絵を描いたんだろう。
そんなことを、ふと考えてしまいました。
いつの間に もう秋? 昨日は
夏だった……おだやかな陽気な
陽ざしが 林のなかに ざわめいてゐる
ひとところ 草の葉のゆれるあたりに
おまへが私のところからかへつて行つたときに
あのあたりには うすい紫の花が咲いてゐた
そしていま おまへは 告げてよこす
私らは別離に耐へることが出来る と
澄んだ空に 大きなひびきが
鳴りわたる 出発のやうに
私は雲を見る 私はとほい山脈を見る
おまへは雲を見る おまへはとほい山脈を見る
しかしすでに 離れはじめた ふたつの眼ざし……
かへつて来て みたす日は いつかへり来る?
(立原道造「また落葉林で」)
今日も明日もがんばろう。
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