伊藤若冲「鳥獣花木図屏風」(プライスコレクション展より)
1cm四方の枡目を組み合わせた、タイル画のような不思議な作品。
その数、8万6千個というから驚きです。
ひとつひとつの桝のなかにもさらに小さな四角が描かれ、
一体どれだけの時間と労力がかかったのかとため息をつくばかり。
これぞ伊藤若冲の畢生の大作「鳥獣花木図屏風」。
あらゆる鳥獣が仲良く身を寄せ合うこの屏風こそ、
プライス夫妻が被災地の人々に見てほしいと願った作品でした。
Birds, Animals, and Flowering Plants in Imaginary Scene(18th century)
Ito Jakuchu
福島県立美術館の「プライスコレクション 江戸絵画の美と生命」では、
子どもにも分かりやすいようにと全ての作品に
キャッチーなタイトルがつけられていました。
「鳥獣花木図屏風」の場合は、「花も木も動物もみんな生きている」。
右隻には白象を中心とした動物たちが、
左隻には鳳凰を取り巻く鳥たちが描かれており、
悦子・プライス氏はこの作品を「仏画である」と言っています。
亡くなった動物や家畜が、皆この中に詰まっているのだと。
ひとつひとつの枡目を見ていくと、
色彩だけでなく中に描かれた四角の大きさや数も異なることが分かります。
細かいものでは枡目の中に9つの四角が組み込まれたものもあり、
また装飾的な紋様が描かれたものも。
特に細かかったのは白象の背中に敷かれた織物。
菩薩様がこのうえに座るのだと考えれば、その精緻さも納得です。
と思いきや、左隻のちょうど中央、下のほうにいる雷鳥も非常に細かい。
雷鳥……何か意味があるのでしょうか。調べてみたけど分かりませんでした。
ちなみに若冲の「鳥獣花木図屏風」のような枡目描は、
他に2点の存在が確認されています。
ひとつは静岡県立美術館の「樹花鳥獣図屏風」、
そしてもうひとつが個人蔵の「白象群獣図」。
どちらも数年前に千葉市美術館の若冲展で見ているので、
これで念願かなって3点すべてを見たことになります。
2006年から07年にかけて東博などを巡回したプライスコレクション展が
最後の里帰りだとプライス氏は考えていたそうなので、
「鳥獣花木図屏風」を見るチャンスはこれが本当の最後かもしれません。
そういう意味でも、本当に足を運んでよかったと思っています。
今日も明日もがんばろう。
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