伊藤若冲「乗興舟」
動植綵絵の制作後、若冲は版画の制作にも取り組むようになります。
若冲の奇想はここにも発揮されていて、
たとえば白黒反転の木版絵巻「乗興舟」。
かっこよすぎてしびれてしまいます。
まさに異次元、アナザーワールド!
Jokyoshu(1767)
Ito Jakuchu
1767年春、淀川を大阪までくだった川下りの体験をもとにつくられたもので、
そのとき一緒だった梅荘顕常が詩を、若冲が風景を描いています。
墨の黒い部分が地色となり、線や面を白であらわすこの技法は「拓版」と呼ばれ、
もともとは中国から伝わり書で使われていたものを若冲が応用したようです。
若冲は水墨画でも、「筋目描」といって
墨の面と面のあいだに生じる白い線を活かす技法を多用しており、
好みの表現だったのかもしれません。
この「乗興舟」は、千葉市美術館の「若冲・琳派と花鳥風月」で展示されていました。
3年前に同館で開かれた「伊藤若冲 アナザーワールド」では
チラシや図録の表紙で主役級の扱いを受けていた作品で、
ぼくは2度めの鑑賞になります。
版画ですので千葉市美にかぎらず、京都国立博物館、大倉集古館、三井文庫、
海外ではメトロポリタンやボストン美術館などなどが所蔵しているそうです。
若冲は他の作品でも同様の表現を試みており、
多色摺版画でこんな作品も(花鳥風月、椿に白頭図)。
うちわに貼付けられていたもので、
骨の線まで巧みにいかしているのが分かります。
う〜む、すごい。
さて、千葉市美術館の「若冲・琳派と花鳥風月」。
上にあげた「花鳥風月 椿に白頭図」は出てませんが、
「乗興舟」をはじめ素晴らしい作品がたくさんあり、
加えて俵屋宗達、酒井抱一、鈴木其一ら琳派の作品も(光琳はなかった)。
酒井抱一の「唐獅子・唐子図屏風」や鈴木其一の「芒野図屏風」、
曾我蕭白の「竹に鶏図」あたりも見どころです。
先日ご紹介した森徹山の作品に出会えたのもうれしく、
また明治から昭和にかけて活躍した浮世絵師・小原古邨の作品も素晴らしかったです。
プライスコレクション展を見に行った方なら、思わずにやりとしてしまう作品も。
中国明時代の山水画から明治〜昭和の神坂雪佳あたりまで実に幅広く、
全123点の優品をななななんと!! たった200円で鑑賞できるのです。
なんという大盤振る舞い、なんという出血大サービスでしょう!
会期は9月23日まで。500円玉でおつりがくるんだから、行かなきゃ損ですよ!
今日も明日もがんばろう。
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