川瀬巴水「桜田門」
今年は川瀬巴水の生誕130年。
これを記念して10月27日から大規模な回顧展が
大田区立郷土博物館で開催されるんですが、
それに先駆けて蒲田のギャラリー鴻というところで、
東京を描いた作品に焦点を当てた展覧会が開かれています。
ということで、キネマの都・蒲田まで行ってまいりました。
Sakurada Gate(1928)
Kawase Hasui
こちらは「桜田門」。
川瀬巴水の代表作「東京二十景」のなかの1点です。
深い青に満たされた暮れ方の皇居。
お堀には桜田門と石垣の影がゆらめき、静寂が広がっていきます。
盟友であった伊東深水(ともに鏑木清方に学び、新版画の道へ)は
巴水のことを「旅情詩人」と呼んだそうですが、なるほど納得ですね。
「東京二十景」は関東大震災後の東京のスケッチをもとに制作されたもので、
震災直後は30万人もの避難民が集まったという皇居前も
5年後の本作では平静に復しています。
ちなみに「東京二十景」には「平河門」「桔梗門」も描かれています。
川瀬巴水「平河門」。たまに仕事をさぼってこの門をくぐります(笑)
さて、この「桜田門」ですが、
会場で珍しいものを見ることができました。
「桜田門(柳版)」というもので、同じ版木を使用しながら
左上にしなだれかかる柳の枝葉を大きく加え、
全体の色合いも紺青ではなく薄い紫に仕上げていて、
これがまた印象がまったく違っていて素晴らしいんです。
今回、「東京二十景」の20点すべてが展示されてましたが
「桜田門」のほかに「池上市之倉」「桔梗門」も、
別バージョンと並べて展示されていました。
こういうのも版画のおもしろさなんですよね。
ギャラリー鴻の「川瀬巴水 —東京の風景—」は、明日(29日)が最終日。
場所は蒲田の片柳学園(東京工科大学内)です。
全81点を無料で鑑賞できますので、ぜひぜひ。
10月27日からの大田区立郷土博物館の展覧会は3期に分けて全作品展示替え、
そして11月26日からは、千葉市美術館にて
これまた大規模な回顧展が予定されてます。
その予習の意味でも、お時間ある方はぜひ足を運んでみてください。
時間のない方には……木版画集がおすすめです。
これ、パラパラめくってると気持ちが落ち着くんだなぁ。
今日も明日もがんばろう。
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