モーリス・ドニ「ミューズたち」(オルセー美術館展その3)
オルセー美術館展は全部で10のブロックで章立てされており、
そのうちのひとつが「ナビ派(7章)」でした。
「ナビ」はヘブライ語で予言者を意味し、
昨日紹介した「セザンヌ礼賛」に登場する画家の多くが、
このナビ派に属しています。
僕自身はナビ派については全然詳しくなくて、
この展示をきっかけに興味を持ったくらいのレベルなんですが
そのなかでもモーリス・ドニの作品の数々には
思わずほおっと感嘆の息をもらしてしまいました。
平坦だけど、どこか神々しさも感じさせる独特の雰囲気。
1893年発表の「ミューズたち」に描かれるのは、
黄金色の神秘的な森に集う9人の女神(ミューズ)たち。
Les Muses(1893)
Maurice Denis
太陽神アポロンに付き従う9人の女神という、神話をもとにした構図ですが
よく目を凝らすと、実は10人目の女神が描かれていることがわかります。
画面中央、2人の女神の頭の上、2本の木の間。
輪郭が強調された9人に比べて、
10人目の女神は衣服をまとっているかも分からないくらいぼんやりとしたタッチ。
それが逆に神々しく、光を放っているようにも感じられます。
構図の巧みさゆえか、それとも曖昧に描かれているせいで想像力をかきたてられるのか、
一度気づいてしまったら、その存在が絵画を支配しているかに見えてしまいます。
「ある一定の秩序のもとに集められた色彩で覆われた平面」と、
モーリス・ドニは自身の絵画論を展開しています。
確かに平面的な絵ではあるけれど、そこに想像力を刺激する要素を盛り込むことで
「ミューズたち」には深い奥行きが生まれているように思えます。
オルセー美術館展のサイトはこちら。
モーリス・ドニの作品は「ミューズたち」のほか、
「セザンヌ礼賛」「カルヴァリオの丘への道」
「テラスの陽光」「ペロス=ギレックのレガッタ」
「木々の中の行列(緑の木立)」など、計10点が展示されています。
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