足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

アーサー・ハッカー「雲」

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ラファエル前派の影響を受けた英国の画家、アーサー・ハッカー。
彼の代表作「雲」は、1901年の発表当時
英国ロマン派の詩人・シェリーの詩とともに展示されていたそうです。
ラファエル前派、そしてシェリーといえば夏目漱石の大好物。
英国留学が1900年から1902年なので、
もしかしたらこの作品を目にする機会があったかも……ですね。
とくに根拠もないけれど、こういう妄想をするのはなかなか楽しいものです。


アーサー・ハッカー「雲」
Cloud(1901)
Arthur Hacker





わたしは海と流れから 渇いた花に
  さわやかな雨をもたらし、
まひるの夢にまどろむ木の葉に
  やわらかい影をあたえる。
太陽のまわりを踊る母なる大地の
  胸にあやされてねむる
やさしい蕾をことごとく目ざめさせる露を
  わたしの翼からふりまく。
わたしはきびしいあられのからざおを打ちふり
  下のみどりの野を白くし
やがてまた雨でとかし
  雷鳴のうちに哄笑しながら去る。

わたしは下の山々に雪をふるうと
  大きな松の林ははげしくうなる。
わたしは夜じゅう山の雪を白い枕として
  疾風に抱かれてねむる。
天空にそびえるわたしのやぐらに
  わたしの案内人である稲妻がいかめしくすわり、
下の暗い洞窟には雷鳴がつながれ
  突然もがき 咆哮する。
大地と大洋のうえを この案内人は
  むらさきの海の底にうごく
霊たちの愛に誘われて
  やさしいしぐさで わたしをみちびき、
小川や 断崖や 丘を越え
  湖と平野をこえ
その夢みるいたるところ 山また川の下に
  愛する「電気」を残していく。
そして稲妻が雨にとけるあいだも
  わたしは「天」の青い微笑を浴びている。

あけの明星がかすかにまたたくとき
  深紅の朝日が くるめく目をかがやかせ
燃える翼をひろげて
  漂うわたしのちぎれ雲の背に跳びのる、
地震にゆれ動く
  山の断崖の一角に
金色の翼のひかりにつつまれた
  鷲が一瞬おり立ったかのように。
そして夕ばえの下の海から 「落日」が
  休息と愛の熱情を吐き
「天」の高みから 夕ぐれの
  まっ赤な帳が落ちるとき、
巣につく鳩のようにひっそりと
  わたしは翼をたたんで 大空の巣にやすむ。

世のひとに「月」と呼ばれる
  白い光にかがやく天球の乙女は
深夜の微風にまき散らされた 羊毛のような
  わたしの床のうえを きらめきながら滑って行く。
そして天使だけしか聞こえない
  目に見えぬ乙女の足ぶみが
わたしの天幕の薄絹の屋根をやぶると
  星たちがそのうしろから顔をのぞかせる。
そこで風がつくった天幕の裂け目をわたしが押しひろげると
  黄金の蜜蜂の群れのように 星たちが
たちまち逃げまどうのをわたしは笑いながら見ている
  やがてしずかな川や 湖や 海は
わたしのあいだから抜け落ちた空の破片のように
  月と星たちで敷きつめられる。

わたしは「太陽」の王座を 燃える帯で
  「月」の王座を 真珠の環で巻く。
疾風がわたしの旗をひるがえすと
  火山はかすみ 星たちはよろめきふらつく。
さか立つ海のうえを 岬から岬へ
  橋のような形に
山々を柱として わたしは
  陽をも通さず 屋根のようにかかる。
大気の「精」たちがわたしの椅子につながれるとき
  暴風や 電光や 雪をひきつれて
わたしが行進する凱旋門は
  色とりどりの虹。
雨にぬれた「大地」が下で笑っているのに
  炎の天球は上で虹の柔らかい色を織っていた。

わたしは「大地」と「水」の娘
  「大空」のいとし子、
大洋と岸べの気孔をとおり抜け
  変化はするが 滅びることはない。
雨のあと しみひとつなく
  天蓋は澄みわたり
風と陽光がその凸面のきらめきで
  大気の蒼穹を築くとき
わたしは静かにわたし自身の墓標を見て嗤い
  そして母胎から嬰児が 墓から亡霊があらわれるように
雨の洞窟から ふたたびわたしは
  立ちあがり 天の蒼穹を打ちくだく。

(シェリー「雲」)







さて、例によって話があちこち飛びますが
絵画の雲、詩の雲ときたので音楽も。
骨肉腫で余命数ヶ月を宣告された青年がつくった「Clouds」という曲です。
残念ながら今年の5月に亡くなられたそうですが、
前向きな歌詞と笑顔に心を打たれます。








今日も明日もがんばろう。
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2 Comments

Sayuri_N says...""
藤島武二の「蝶」に続いて、ラファエロ前派の作品が登場し、どちらも大好きなので嬉しくなりました。

「雲」という言葉に、わたしは輪廻転生や「次に受け継ぐ」というイメージがあります。
(多分映画「クラウド・アトラス」の影響もあるかと)

「大地」と「水」の娘
  「大空」のいとし子、
大洋と岸べの気孔をとおり抜け
  変化はするが 滅びることはない。

zachさんのご冥福をお祈りいたします。
素敵な曲でした。

2013.12.23 01:15 | URL | #- [edit]
スエスエ201 says..."Re: タイトルなし"
> Sayuri_Nさん

こんばんは。
雲と転生、おっしゃる通りですね。
いただいたコメントを読んで、
ポール・ギャリコの「雪のひとひら」という小説を思い出しました。
雲から生まれた雪の結晶の旅を描いたお話です。
水の営みと同じように、命もまためぐるのでしょうね。
2013.12.23 02:30 | URL | #- [edit]

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