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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

シスレー「モレの橋」

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3連休最終日は八王子の富士美術館へ。
ちと遠いものの、「光の賛歌 印象派展」というタイトルからして
見に行かないわけにはいきません。
非常に評判がいいみたいで、多く聞かれる声が
「あの画家の作品がいっぱい!」。
さて、あの画家とは……?


シスレー「モレの橋」
Moret Bridge(1893)
Alfred Sisley




アルフレッド・シスレー。
パリ周辺の水辺を多く描いた、印象派の画家です。
約37年のキャリアのなかで画風を大きく変えることなく、
特に斬新な構図や実験的な色彩に挑むでもなく、
淡々と穏やかな風景を描き続けた画家。
たとえば上にあげた「モレの橋」にしても、
特別目を引く何かがあるわけではありません。
展覧会ではシスレーの作品が13点も出品されていましたが、
どれを見ても強く印象に残るものではありませんでした。
でもね、見れてよかったなって、そう思ってしまうわけです。
とても穏やかで、静かで、ゆっくり心にしみてくるようで。

シスレー「春の小さな草地」
「春の小さな草地」。青い服の少女は、シスレーの娘さん。



シスレーはイギリス人の両親の間に生まれ、
裕福な環境で育っているんですが、
戦争の影響で父が破産し困窮を余儀なくされます。
フランス国籍の取得を望むも、2度にわたり却下され
59歳のときに癌で亡くなります。
印象派の画家として多くの作品を残しましたが、
最後まで貧窮から抜け出すことはできなかったのだとか。
でも、作品にはそういった影がまったくあらわれてこないんです。
「モレの橋」を描いたときも苦しい生活のただ中だったはずなのに
とてもそんな悲壮感は漂ってきません。
そこにあるのは平穏であり、ささやかな喜び。
だから他の印象派の作品に比べて目立たないけど、
不思議と心地よく感じられるんでしょうね。


シスレーの風景画の特徴として、
顔が判別できないくらいに人物が小さく描かれているというのがあります。
これってユトリロと共通する特徴なんですが、
孤独や寂しさを隠そうとしないユトリロの画風に対して、
シスレーの風景画には暖かみがあります。
小さな人物にもさりげなく愛情が注がれているようで、
激しくも熱くもないけど、確かな温もりがある。
うまく説明できませんが、そのへんがシスレーの素晴らしさなのかな、と思います。

シスレー「モレのロワン運河」
「モレのロワン運河」。のんびり散歩したくなる一枚。



東京富士美術館の「光の賛歌 印象派展」は1月5日まで。
その後福岡市博物館、京都文化博物館に巡回します。
副題は「パリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅」。
シスレーをはじめとする印象派の画家たちによる、
水のうつろいや川面への光の反射、荒々しい海などの描写がたのしめる
素敵な展覧会ですよ♪



■「光の賛歌 印象派展」の公式サイトはこちら
■シスレーの作品一覧はこちら




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2 Comments

究極の絵画 says...""
いいですねシスレー。
大規模なシスレー展が見たい。

光の賛歌 印象派展でマネの名画が出品されるようですが、東京は出品なく京都の会場で登場のようです。
見たかったなあ。
2013.12.24 12:06 | URL | #- [edit]
スエスエ201 says..."Re: タイトルなし"
> 究極の絵画さん

こんばんは。コメントありがとうございます。
マネは「アルジャントゥイユ」ですね。
あとで図録を見返して、「出品してないじゃん!」とのけぞりました(笑)
シスレー展、どこかで企画してくれるといいですねぇ。
2013.12.25 02:11 | URL | #- [edit]

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