カイユボット「ヨーロッパ橋」
年の瀬ですね。
ようやく仕事も片付いて、飲み会も一段落して
おうちでゆっくり過ごしております。
展覧会のチラシなど整理して……
いけない、あれをご紹介するのをうっかり忘れておりました。
ブリヂストン美術館の「カイユボット展」。今日でおしまいじゃないか。。
The Bridge of Europe(1876)
Gustave Caillebotte
ということで、カイユボット展より「ヨーロッパ橋」。
第3回印象派展に出品された作品です。
サン=ラザール駅の構内の上にかかる陸橋を描いており、
なるほど画面右手には可愛らしい汽車が見えます。
頬杖をついて物思いにふける男性、
こちらに向ってくるシルクハットと日傘の男女。
背を向けて去って行く労働者風の男、
そして画面の外からまよい込んできたような茶色の犬。
労働者と富裕層、2つの生活が交差する
どこか示唆的な構成ですね。
カイユボットは裕福な実業家の息子として生まれ、
印象派の画家たちに経済的な援助をしていたことから
どちらかというとパトロン的なイメージが強いかもしれません。
しかし画技の確かさは前掲のとおりで、
もともとアカデミズムの画家に学んだこともあって
印象派の面々とはまた違った作品を残しています。
それは写実的な、都市生活者の視点。
客観的で少し冷めた、物憂い景観であったり、
富裕な生活だからこそ観察できる世界であったり。
精神的な意味でも、物理的な意味でも、
やはりカイユボットの立場だからこそ見えたものは大きいと思うのです。
たとえば「見下ろした大通り」や「シルクハットの漕手」など。
自分としてはこういう構図や題材が非常に物珍しくて、
食い入るように見つめてしまいました。
「見下ろした大通り」。物寂しい俯瞰視点。
「シルクハットの漕手」。ボートの同乗者の視点。
そしてカメラを通して見たような、映画の一場面のような世界。
「ヨーロッパ橋」のほかにも、
「昼食」や「室内ー窓辺の女性」あたりにそういった雰囲気を感じました。
どこか構図に違和感を感じるんですが、
よく見るとそれがカメラワークのように
画家の目の動きを再現しているんですね。
静かな絵のようでいて、実はストーリーがある。動きがある。
目にうつった一瞬をカンヴァスに封じ込めるのではなく、
むしろカイユボットの場合はカンヴァスのなかから物語が膨らんでいく。
そんな気がしました。
「昼食」。手前の席に座り、手元から正面の女性に視点が移っていくような構図。
「室内 - 窓辺の女性」。2人のあいだに漂う緊張感。
カイユボットのみの回顧展は日本初とのこと。
世界各国から作品を集め、この貴重な展覧会を実現してくれた
ブリヂストン美術館に感謝感謝です。
■「カイユボット展 - 都市の印象派」の公式サイトはこちら
■カイユボットの作品一覧はこちら
今日も明日もがんばろう。
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