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足立区綾瀬美術館 annex

東京近郊の美術館・展覧会を紹介してます。 絵画作品にときどき文学や音楽、映画などもからめて。

ミレイ「オフィーリア」

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吸い込まれそうな虚ろな瞳。
むせかえるような緑、
運命を知らぬ可憐な花々。
ミレイの代表作「オフィーリア」に、やっと出会えました。


ミレイ「オフィーリア」
Ophelia(1851-52)
John Everett Millais




ジョン・エヴァレット・ミレイ「オフィーリア」。
言わずと知れた、ハムレットの悲劇のヒロインを描いた作品です。
恋人のハムレットに父を殺されたオフィーリアは、
やがて正気を失い、花輪とともに小川に落ち、
人魚のように川面を漂いながら讃美歌を口ずさんだといいます。
死が近づいていることに気付かず、夢の中で歌っているのです。


よく見ると腰の部分だけが水面より下になっています。
いったんこうなってしまうと、体勢を戻すのは難しい。
今はまだドレスの裾が空気をはらんで浮きの役割を果たしていますが、
やがて彼女は腰から沈み、次いで足が水中に没し、
最後には花を握った右手が宙に残されるのでしょう。


はじめてこの作品を知ったのは中学のとき、美術の教科書にて。
思春期まっただ中の少年にとって、
死の淵にある女性の恍惚ともいえる表情は
どこか怖く、けれど目をそらせない何かがありました。
そして水泳部に所属していたこともあって、
いっそうこの場面がリアルに感じられてしまったのです。
彼女の命が尽きるさまが、ありありとイメージできてしまう。
暗い水底に沈んでしまう彼女がかわいそうで、
だからずっとこの絵は暗い緑の印象が強かった。
ところが……森アーツで実物と対面して、緑の鮮やかさに圧倒されたのです。
花々もまた、力強く色彩をまとっている。
もしかしたら、彼女は沈みかけているのではなく
上体を起こそうとしているのではないか……そんな気さえしました。


ミレイはラファエル前派の結成メンバーの中心人物であり、
ロンドンのロイヤル・アカデミー附属美術学校へ
史上最年少で入学を許可された俊英。
20代前半という若さで描いた「オフィーリア」は、
ラファエル前派屈指の傑作として知られています。
そして今月25日から始まった森アーツの「ラファエル前派展」で
本作が待望の来日を果たしているのです。
イギリスのテート美術館からはじまって、
ぼくが行ったときは遅めの時間だったこともあって比較的すいていて、
心ゆくまで「オフィーリア」の世界に浸ることができました。
会期は4月6日まで。
すばらしい内容でしたので、次回もこの展覧会の出品作品を紹介したいと思います。



■森アーツセンターギャラリー「ラファエル前派展」の公式サイトはこちら
■エヴァレット・ミレイの作品一覧はこちら




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