ムンク「接吻」と「光に向って」
国立西洋美術館で開催中の「モネ、風景をみる眼」という展覧会では
印象派の光と色彩を存分に味わえるのですが、
常設では一転、モノクロームの世界が広がります。
画家の名はエドヴァルド・ムンク。
生誕150周年を記念した版画展です。
The Kiss(1895)
Edvard Munch
こちらはムンク「接吻」。
同様のモチーフの作品をムンクは数多く残していますが、
そのなかでもこの版画は凄艶で、刹那的で、
じっと見ていると胸が苦しくなってくるほどです。
窓辺に立ち、裸で抱き合う2人。
狂おしく唇を求めるその姿は絡みあう幹のようでもあり、
どんな力をもってしても引き離せぬ強い力を感じます。
行くあてもなくぶつけ合うしかない愛のかたち。
お互いを滅ぼしかねないと分かっていても、
それでも求めずにはいられないのでしょうね。
会場ではこの作品のほか、
「マドンナ」「ヴァンパイア」など
代表作の版画バージョンもありました。
モノクロームの世界は過去の写し絵のようで、それがなんだか寂しく……。
でもね、会場には一筋の光がありました。
モノクロームの作品群にまじって、鮮やかな色彩があったのです。
タイトルは「光に向って」。
光に手を伸ばす男性の姿は、
オスロ大学講堂の「太陽」を思わせます。
ずいぶん時が流れてしまって不安に思うことも多いけれど、
この作品を見て、また希望が持てました。
5年、10年、そのときがいつになるか分からないけど、がんばろうと思います。
寄り添う人はもういないけど、確かな光がある。
今日も明日もがんばろう。
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